「物語」のつくり方入門(円山夢久)

----- はじめに -------------------------------------------------------
 ・物語には「絶対、この手順に沿って書かなければダメ!」というルールはない。とはいっても完全に自由では初めは途方に暮れてしまう。本書は、そういう人のための超基礎的なマニュアル

----- あなたの今の状態を知る -----------------------------------------
 ・まず、これから書きたいと思っている作品について、思いつくかぎりのことをメモする
 ・下記の質問に答える(決まっていない場合は、無理に決めず飛ばす)
   1.作品のタイトルは?
   2.作品の時代設定は?
   3.作品の舞台は?
   4.主人公の名前は?
   5.主人公の年齢は?
   6.主人公の職業は?
   7.主人公の性格は?
   8.作品の内容を一言で言うと、主人公が何をするお話?
   9.主人公は「問8」の目標を達成しますか?
   10.作品の結末は、ハッピーエンド? ソーリーエンド(ハッピーではないけれど、心に残るエンド)?
   11.この作品で、読者はどのような気持ちになるか?
   12.作品の内容を、三行以内で簡潔にまとめる
 
----- 物語のおおまかな輪郭を作る -------------------------------------
 ・お話作りに「こうしなければならない」という絶対的なルールはない
 ・一つの物語をまとめ上げるには、その世界で、その人物がどのように行動し、どのような過程を経てラストにいたるのか、というストーリーライン、すなわちプロットが不可欠
 ・よほどの天才でもないかぎり、新しいお話をゼロから作るのはプロでも無理
 ・特に初心者のうちは、頑張って0から1を生み出そうとするより、1を1′にすることを考えたほうがうまくいく
 ・一番簡単なプロットは、「主人公が××する話」のように、主人公を主語に置き、一言でまとめてしまうこと
 ・どんなに素敵なキャラクターでも、舞台に棒立ちのままでは映えない。その魅力を引き立たせるためには、何かしらの行動をさせなければならない
 ・キャラクターが何もしなくても、ただその姿を見ているだけで満足というのなら、「自分が作りたいものは、実はお話ではなく、イラストや映像、あるいは二次創作なのではないか」と自分に問いかけてみたほうがいい
 ・一言でまとめたプロットに、「いつ」「どこで」「誰と」「何を」「どのように」を付け足してみる
 ・起爆剤を見つける
   1.これまで読んだり観たりした小説/漫画/映画/ドラマの中から、気に入った作品のタイトル(もしくはシーンやキャラクター)を思いつくかぎり書く(時間と手間を惜しまず、本当に気に入った作品をなるべくたくさん出す)
   2.リストに挙がった各作品について、以下の項目を書き込む(C以外は、曖昧に書いても飛ばしても良い)
     A.「主人公が××する話」のように一言で言うとどうなるか?
     B.Aの文章に「いつ」「どこで」「誰と」「何を」「どのように」という項目を補うとどうなるか?
     C.その作品のどんなところが好きか?
   3.これらの作品から共通点(「好き」のポイント)を見つける
     ジャンル、雰囲気や世界観、時代設定、舞台設定、キャラクターのタイプ、結末、出来事(何をするか)、動機、パターンやエピソード、アイテムやキーワード、受け手が抱く感情、受け手が受ける影響や効果、その他
     (レンタルビデオ屋や書店で、何に目を留めて手に取っているか)
     (三角関係が好きなら、他は何でも良いのか、それともハッピーエンドとセットでないとダメなのか)
   4.大好きな「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」を集大成したリストが出来上がる
 ・伝統的なパターンの例「サクセスストーリー」「シンデレラストーリー」「スポ根」「バディもの」「ラブコメ」「悲恋もの」「心中もの」「難病もの」「近親相姦もの」「旅もの」「宝探し」「バディ・ロードムービー」「珍道中」「ヒーローもの」「戦隊もの」「完全懲悪もの」「貴種流離譚」

----- 物語全体の流れを作る -------------------------------------------
 ・プロットをひとつの文章にまとめる、「主人公がいつどこで誰とどのように何をなぜ」(例:主人公が、中世っぽい、ファンタジー世界で、味方のモンスターたちと、好きな人と世界を救うために、魔法で、敵を倒す)
 ・群像劇はかなりの力量を必要とするため、初心者には勧められない
 ・「セットアップ」→「ツカミ(最初の事件)」→「展開・葛藤」→「クライマックス」→「解決」
 ・まずセットアップ(導入)を考える。「いつ」「どこで」「主人公」を明確にすることが重要
 ・クライマックスを決める。「誰と」「どのように」
 ・クライマックスの手前で「クライマックスの逆をやる」(敵を倒すクライマックスなら、敵に倒されそうになる)
 ・クライマックス直前の危機(あるいは幸福)が大きければ大きいほど、読者の期待や緊張感が高まる
 ・「CQ=セントラルクエスチョン」とは、読者からの問いかけ。「主人公は敵を倒すことができるのか?」など。プロットに書いた出来事の疑問形になる
 ・日常モノは、エピソード(シチュエーション+出来事)の積み重ねで成り立つ。クライマックスには、一番印象深いエピソードをもってくる
 ・「展開・葛藤」は、物語の大半を占める。お話の面白さはこのパートで決まるとさえ言える
 ・「展開・葛藤」のアイディアを出す上で、一番わかりやすいのが「クライマックスに辿り着きにくくする」方法(倒す敵の居場所がわからなかったり、倒し方がわからなかったり)
 ・「成功指標」とは、「主人公が、具体的にどんな条件を満たせば、目標を達成したことになるか?」(「プロポーズしてイエスの返事をもらう」など、必ず具体的でなければならない)
 ・「何を(出来事)」「なぜ?(動機)」それぞれに成功指標を書き加える
 ・成功指標を考えることは、お話のアイディアを広げることにも繋がる
 ・人は困難に出会ったとき、いきなり難しいことをしようとはしない。主人公もそのように行動させる。その上で、主人公の逃げ道をひとつずつつぶしていく
 ・動機から逆算して障害を作り出し、それに対するトライ&エラーを描くことでも、「展開・葛藤」を作れる
 ・長編の場合、これだけでは単調になったり大味になってしまう可能性があるので、エピソードを追加する(「こんな事件が起きたら面白そう」「このエピソードがあったらワクワクしそう」というエピソードを2、3個書き加える)
 ・残りは「最初の事件」と「解決」
 ・最初の事件は、クライマックスの出来事と必ず関連していなければならない(ラスボスと出会う、など)
 ・サスペンスとミステリーは、お話を作る上で非常に重要な役割を果たす
 ・「解決」パートの役割は、読者へのフォロー(CQに対する答えは出ているため、読者の「この先を読みたい!」という動機づけはすでに失われている
 ・「解決」パートは、「CQの答えが出た後、主人公はどうなったのか?」という後日譚を、「さらりと」見せる(基本的にそれほど長くする必要はない)

----- キャラクターの考え方 -------------------------------------------
 ・エンターテイメント系の作品では、作中で起きるトラブルが生命の危機に直結するものであればあるほど、登場人物は没個性的になりやすい傾向がある
 ・マズローの欲求段階説
 ・単純な欲求は、非常に強い説得力を持ち、感情移入しやすくなる(しかし、キャラクターの個性は薄くなる)
 ・キャラクターの個性を三つの側面に絞ってみる「欲求(=動機)」「価値観(=好み/善悪の判断)」「能力」
 ・欲求(「~したい」「~したくない」)
 ・価値観(「~が好き/嫌い」「~は良い/悪い」「美学」「ポリシー」)
 ・能力(当人の肉体精神だけではなく、「後付け」「外付け」の能力も含む)
 ・何かに対してマイナスの判断が下されたとき、人は大きく分けて「戦う」「逃げる」「何もしない」という行動をとる。fight-or-flight response(戦うか逃げるか反応)
 ・キャラクターを作るときは「欲求・価値観・能力」を念頭に置いて作る
 ・個性的にするためには、意図的に「極端」にする(「普通のキャラクター」であっても、お話の最初から最後まで普通のままではつまらない)
 ・ごく普通の主人公が、ごく普通に恋をしたり、ごく普通のトラブルに巻き込まれたりする様子を面白おかしく描くのは、実はとても難しい
 ・初心者ほど、極端な状況、極端なキャラクターを使ってお話を作るべき
 ・外見や言葉遣いだけを極端にしても「飛び道具」にしかならない。「欲求・価値観・能力」のいずれかあるいは複数を極端化することで掘り下げる

----- 主人公を作る ---------------------------------------------------
 ・まず主人公の年齢と性別を決める、次に「能力」を決める
 ・「能力」に対する評価が以下のいずれに当てはまるか確認
   A.自己評価が高く、実際に能力が高い
   B.自己評価は低いが、実際は能力が高い
   C.自己評価が高いが、実際は能力が低い
   D.自己評価が低く、実際に能力が低い
   ※あくまでも「能力に対する評価」であることに注意
 ・Aタイプの主人公に仕事が舞い込んでそれを解決する、という物語の場合は以下のポイントを抑える「主人公の能力」「その能力を活かせるような職業や環境」「その能力をもってしても解決が困難な事件、あるいは依頼」「主人公と長年にわたって確執を繰り広げるライバルや、敵キャラクター」
 ・Bタイプは、特に若者向けのエンターテイメント作品で人気がある
 ・Cタイプの主人公の物語は、以下の条件によって、展開に様々なバリエーションがつけられる「主人公が周囲の評価を気にするか/しないか」「主人公が自分の能力を客観的に評価できるようになるか/ならないか」「主人公が自分を変える努力をするか/しないか」
 ・Dタイプの主人公の物語は、「高い能力を持つ味方」が配置されたり、主人公自身が後から「高い能力やマジックアイテム」をゲットしたりする、というパターンがよくある
 ・ダメダメな状態からスーパーマンになり、その能力を行使する過程で少しずつ内面も成長していく、という物語は、年代を問わず、根強い人気を誇る
 ・主人公の価値観を決める。「生きていく上で一番大事にしているもの」は何か、決める(「夢」「愛」「平和」など曖昧な単語を使わず具体的に)
 ・曖昧なものを具体的にするためには、「それってどんなもの?」「何(あるいは誰)に対するもの?」などと質問を繰り返す
 ・その価値観が危機にさらされるような状況を考える(10パターン程度)
 ・主人公視点で物語を見ると、お話は主人公のアクションと、それに対するリアクションの繰り返しで進んでいく
 ・主人公の「性別」「年齢」「能力」「自己評価」「価値観」で、どのようなアクション/リアクションを取るか考える
 ・主人公が動かない場合は、周りの人間が動けばいい
 ・主人公はなるべく孤立させないほうがいい(ドラマの面白さは、人と人とのせめぎ合い)

----- 敵対者を作る ---------------------------------------------------
 ・物語はモメればモメるほど面白くなる。「トラブル・葛藤・対立」
 ・トラブルは相手が人間でなくても成立する。葛藤は自分一人のときにも発生する。対立だけは相手なしには成り立たない
 ・敵対者は、主人公とは相反する欲求、あるいは価値観を持つキャラクター(主人公と敵対者の意見が対立するように作れば、お話を展開させやすくなる)
 ・必ずしも主人公の「敵」とは限らない(欲求や価値観が対立しているだけ)
 ・敵対者の「能力」は、必ず主人公の欲求や価値観に影響を及ぼすものにする
 ・プロットに「アクション→リアクション」の流れを書くときは、その行動をしている人物は誰なのか、主語を明確にする
 ・主人公と敵対者の「アクション→リアクション」を進めていった結果、膠着してしまう場合には、前述した通り「周りの人間」を動かす

----- 援助者を作る ---------------------------------------------------
 ・主人公の能力に対して、トラブルの規模が大きすぎたり、敵対者の能力が高すぎたりすると、主人公ひとりではどうすることもできない。ここで絶対やってはいけないのは「トラブルの規模やレベルを下げる」「敵対者の能力を小さくする」「主人公の能力設定を底上げする」
 ・主人公の手にあまる問題ほど「エンターテイメント性が上がる=面白い」
 ・主人公のアクションに対して、マイナスのリアクションをするのが「敵対者」、プラスのリアクションをするのが「援助者」
 ・援助者の役割は2つ「主人公のサポート」「行き詰まりを打開し、物語を先に進める」
 ・援助者がやりすぎてはいけない、あくまで主人公のサポート
 ・主人公に積極的に関わろうとする強力な動機や理由を持つ人物は、それなりに重要なキャラクターになる(援助の度合いと役のバランスが重要)
 ・行きずりのキャラクターに、大した理由もなく重要な手助けをさせてはいけない(ご都合主義になる)
 ・基本的に「内面のアクション/リアクション」は、何らかの形で目に見える行動に移すか、周囲のキャラクターに察してもらうかしないと、次の「アクション/リアクション」には移れない(次に移るとご都合主義になる)
 ・ドラマとは、葛藤や対立と同時に、変化を描くこと
 ・主人公、あるいは主人公を取り巻く人々や状況は、エピソードの前と後では、どこかしら変化していなければならない
 ・お話は、主人公のアクションと、それに対する周囲の人・モノ・事件や事態のリアクションの繰り返しで進む
 ・我々が小説を読んだりTVドラマを観たりするのは、人について描かれたお話が読みたい/観たいとき
 ・人の気持ちが描かれていなければ、起きたことを羅列しているだけ、ドラマの面白さは半減する
 ・主人公を始め、主要なキャラクターを動かすときは、彼らの価値観や欲求をきちんと考えて動かす
 ・話の展開の都合でキャラクターを動かしてはいけない(どうしてもやりたい場合は、十分な必然性を作る)
 ・登場人物たちが、それぞれの欲求や価値観の赴くままに、ある意味、自由に好き勝手に動き出したとき、物語は驚くほど生き生きと面白くなる
 ・本書では便宜上、「敵対者」と「援助者」を別々のキャラクターとして紹介したが、実際には場面によって役割が変わることもよくある

----- ディテールと演出 -----------------------------------------------
 ・「ありがち/ありきたり」=「正統派/王道/定番」
 ・パターン踏襲が悪いのではない、ディテールで手抜きをするのが悪い
 ・オリジナリティはディテールに宿る
 ・「主人公が悪戦苦闘しながらダメチームを勝利に導く」というスポ根パターンのストーリーに対して、「主人公の性別/年齢/職業」「競技」「時代」「場所」を10通り以上考えてみる(まったく同じストーリーラインでも、設定をいくつか変えただけで、目新しいものができる
 ・明確なテーマやメッセージ性のある作品は、読者への訴求力が強くなる。しかし、描き方によっては説教くさくなったり、一方的な価値観の押しつけになる。物語はあくまで娯楽。読者が楽しめる内容にすることを最優先に考える
 ・スポ根をメジャーな競技で書くなら、その分、競技以外の部分を工夫しよう
 ・きちんとしたディテールは、お話全体を骨太にしてくれる
 ・過去の偉人など有名人を使う場合は、コアなファンがいることに留意する。作品で使う使わないは別として、その人物の生涯や、広く知られるエピソード、同時代の有名人や時代背景などは、最低限、押さえておいたほうがいい
 ・歴史小説の面白さは、読者があたかもその時代にタイムスリップしたかのように、過去の風物を見聞きしたり、歴史上の人物との交流を楽しんだりできるところにある
 ・「ありがちだ」と思えるプロットも、その設定でなければならない理由があるならば問題ない
 ・ありがちなプロットで、そのプロットで無ければならない理由が見当たらないなら、自分はその物語で何を一番書きたいのか、一度整理するべき
 ・どんなジャンルにも、そのジャンルが大好きな人がいる。その人たちの目から見れば、「本当に情熱を注いで書かれた作品」と「いい加減な気持ちで書かれた作品」の違いは一目瞭然
 ・魔法が出てくる物語には、魔法が存在するだけの必然性が、動物を主人公にした物語には、動物を主人公にするだけの必然性が不可欠
 ・自分が読んで一番楽しいと感じる分野にチャレンジしてほしい
 ・ミステリーの手法:結論(結果)を先に見せてから理由や経緯を見せる(「なぜ?」と思わせる)
 ・サスペンスの手法:いいところで中断する(先を予感させる描写を必ず入れること。「どうなったの?」と思わせる)
 ・初心者には、まず、自分の身の回りで起きる出来事の「場面を入れ替えて再構成する」練習をお勧めする
 ・ミステリー、サスペンス共に、最初のシーンを、いかに面白く読ませるか工夫することが大切
 ・アイディアを出すサポートに「オズボーンのチェックリスト」
   1.転用(別の使い道は? 他の分野に応用したら?)
   2.応用(それに似た別物は? 何かの真似をしたら?)
   3.変更(意味、色、働き、音、匂い、様式などを変更したら?)
   4.拡大(増やしたり、大きくしたりしたら?)
   5.縮小(減らしたり、極小サイズにしたりしたら?)
   6.代用(人や素材や製法を何かで代用できないか?)
   7.再利用(要素や型や配置や順序を再利用できないか?)
   8.逆転(価値や立場、時系列を逆転させたらどうなる?)
   9.結合(人物、出来事、ジャンル、要素などを混ぜたらどうなる?)
 ・作品の「ウリ」を考える。多くても3つぐらい。思いつかない場合は、自分が面白いと感じた作品の面白かったポイントを参考にする
 ・一番の「ウリ」を決める。(「カッコイイ世界観」がウリなら、カッコイイ世界観とは具体的に何か、それをさらに自分好みにするとしたらどうなるか)
 ・ウリを作ろうとして「ウケを狙おう」「感心されよう」とすると、肩に力が入る。自分が好きな何か、面白いと感じる何かを、さらに自分好みにカスタムするにはどうしたいいか考える
 ・自分の個性やオリジナリティは、自分の「好み」の集積
 ・好きなもの、嫌いなものひとつひとつは、すでにこの世に存在するものばかりだが、それらが組み合わさってできた「自分」という個性は、この世にただ一つしかない
 ・自信を持って、自分の「好き」を「物語」というカタチに仕上げてほしい

----- おわりに -------------------------------------------------------
 ・初心者や中級者以上でもしばしば、肩に力が入り、自分に無理やり「書け」と命じているようなところがある。緊張しきって書いたものより、リラックスして楽しく書いたもののほうが、断然面白い作品ができる。自分が好きな作品のことを気心の知れた相手に話すときの感じを覚えていてほしい

 ※本文章は『「物語」のつくり方入門 7つのレッスン/円山夢久(著)』を引用または要約して記述したものです
 ※「大人の文章塾 夢久庵」(著者ホームページ)
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