「物語」の組み立て方入門(円山夢久)

----- 前回の復習 -------------------------------------------
 ・「読者に与える効果や影響」「ジャンル」「雰囲気や世界観」「キャラクター」「題材」「アイディア」などをひとつの物語にまとめ上げるには、プロット(ストーリーライン)が不可欠
 ・初めのうちは、0から1を生み出そうとするより、すでに存在する1を1′にすることを考えたほうがうまくいく
 ・人には誰しもその人だけの好みがあり、多くの作品から抽出された自分の好みは、オリジナル作品を生み出す原動力になる

----- ジャンルと題材、そしてテーマ -------------------------
 ・プロット(お話をひとつにまとめ上げるストーリーライン)
 ・ジャンル(そのお話の様式を様々な観点から分類したもの)
 ・題材(そのお話で扱う事件や背景、設定など)
 ・テーマ(そのお話で書き手が読者に伝えたいメッセージや考え方)
 ・「どんな話を書きたいですか?」という質問に対し、「ハッピーエンドのお話が書きたい」と答える人は、現時点では書きたいお話の結末しか決めていないということ(この状態から執筆を開始できる人に本書は必要ない)
 ・ジャンルの中には、ある程度のプロットを含んだものがいくつか存在する
 ・広く一般に愛される物語には、典型的なプロットがある。これをお話を作るための土台にする

----- ディザスターもの -------------------------------------
 ・広く一般に愛される物語には、様々な「お約束の展開」が含まれている(本書ではこれをテンプレートと呼ぶ)
 ・ディザスター(天災や災厄、思いがけない大きな不幸)
 ・日本では「パニックもの」と言われることもある
 ・「天災」「災厄」「思いがけない大きな不幸」を100個書き出す
 ・「ディザスターもの」系統分け(※これ以外の系統も探してほしい)
   ・災害系(大地震や津波など)
   ・侵略系(宇宙人に侵略されるなど)
   ・世界の変質(それまで信じていた世界が一変するもの)
   ・疎外系(社会的に疎外されるもの)
   ・体の異変(自分の体に異変が起こるもの)
   ・異能(都合の悪い特殊能力が身につくもの)
   ・家族の異変(家族の心身に異変が起こるもの)
   ・不審な出来事(些細ではあるが不審な出来事が起こるもの)
 ・ディザスターもののテンプレート
   1.主人公の周囲で異変が起きる
   2.主人公はその異変に
     ア.自分から積極的に関わる
     イ.否応なく巻き込まれてしまう
   3.異変がどんどん大きくなる
   4.主人公は最終的に
     ア.自力で異変を解決する
     イ.異変からの逃亡に成功する
     ウ.異変が自然消滅する
     エ.バッドエンド(解決・逃亡に失敗する)
 ・100個のアイディアとテンプレートを使って、プロットを作ってみる
 ・「身内の敵」や「裏切り者の存在」は、ディザスターものの緊迫感を盛り上げるのに大変役立つ演出

----- ラブコメディ -----------------------------------------
 ・コメディリリーフ(緊張した場面に滑稽な場面を挿入して、過度な緊張感を和らげる手法)
 ・ラブコメディのテンプレート
   1.男女(同性愛もあり)が出会い、恋に落ちる
   2.二人は様々な障害を乗り越え
   3.最終的に結ばれる
   ※「様々な障害」を生命や安全の危機にしないように注意する
 ・「恋の障害」になりそうだと思う出来事を、100個考えてみる(生命や安全の危機は除く)
 ・「恋の障害」系統分け(※これ以外の系統も探してほしい)
   ・ハンディキャップ(お互い、もしくは一方にハンデがある)
   ・邪魔者(二人の仲を邪魔する存在がいる)
   ・事件(恋に障害が発生する。事件と二人の恋を必ずリンクさせること)
   ・距離と時間、物理的な壁(障害の克服にばかり集中すると、恋愛色が薄れるので注意)
   ・板挟み(いかにして主人公が恋を選ぶのを困難にするかがポイント)
   ・ギャップとペナルティ、秘密とノルマ(身分の違い、言えない秘密があるなど。ノルマが障害になる場合は、ラブコメディからはずれないように注意)
   ・気持ち(一方もしくは両方の気持ちに問題がある)
 ・100個のアイディアとテンプレートでプロットを作る。以下の4点に留意する「作品のタイトル」「2人が出会い、恋に落ちたきっかけ」「2人の恋の障害は何か」「2人はどのように障害を克服し、ハッピーエンドを迎えるか」
 ・障害を乗り越えるところで脱線しやすいので、「恋」から離れないよう注意

----- ヒーローもの -----------------------------------------
 ・ヒーローもののテンプレート
   1.何らかの特技または職業を持つ主人公のもとに、仕事の依頼、またはトラブルが舞い込む
   2.主人公は特技や職業上の知識を生かして様々な障害を乗り越え
   3.最終的に依頼された仕事を達成、あるいはトラブルを解決する
 ・「ヒーローもののテンプレート」は、特技または職業を上手に設定すれば、比較的簡単にシリーズ化できる
 ・主人公の特技を決める。具体的に能力を設定するとお話を考えやすくなる
 ・主人公の特技になりそうな能力を、100個考えてみる
 ・「特技」系統分け(※これ以外の系統も探してほしい)
   ・スキル(実際にありそうなスキル。一件ありがちでも「他の分野で役立てることはできないか?」と考えると可能性が広がる)
   ・超能力(現実には無さそうな能力。ポイントは、デメリットをつけるなどして、能力をなるべく限定的に設定すること)
   ・アイテム(主人公の持ち物。課題達成や問題解決の過程で使われるものと、最後に必殺技として使われるものがある)
 ・水戸黄門のように、「前半=謎解き、後半=アクション」というのは多くの番組で採用されている。「お約束」でありながら、長寿番組となっているものが多い。視聴者にわかりやすく、愛されやすいパターン
 ・ヒーローもののプロットを作ってみる。以下の4点に留意「作品のタイトル」「主人公の特技」「主人公が解決すべきトラブル、あるいは達成するべき目標は何か」「主人公はどのようにトラブルを解決、もしくは目標を達成するか」
 ・お話の筋は、キャラクターの特性を変えることでも大きく変わる。慣れてきたら、主人公や脇役のキャラクターをあれこれ変えてみて、プロットがどのように変化するか体験してみてほしい

----- バディもの -------------------------------------------
 ・「バディ」とは英語で「相棒」のこと
 ・バディもののテンプレート
   1.主人公と副主人公が出会い、行動を共にすることになる
   2.二人は対立と葛藤を繰り返しつつ
   3.最終的に二人の間に固い絆が生まれる
 ・ラブコメと似てはいるが、ラブコメでは比較的早い時点で恋愛関係になるのに対し、バディものは行動を共にするだけ。むしろお互いに反感を持っていたりすることも多い
 ・ラブコメは二人の仲を隔てる障害に様々なバリエーションがあったが、バディものは基本的に両者間の対立と葛藤がメインになる
 ・エンタメ作品は、おおむね、複数のジャンル(プロット)をまたいで作られているのが普通
 ・プロットの複合技は中級レベル。初心者は、練習のためにも、なるべくシンプルなプロットを書く
 ・バディものは、どうしてもそりが合わない2人組さえ作ってしまえば、半分できたも同然(対立・葛藤しやすいペアリングを考えることがポイント)
 ・対立を生みむための2つの観点「両者の力関係に意図的にギャップを設ける」「価値観の相違」
 ・「両者の力関係にギャップがある組み合わせ」と「価値観が対立する組み合わせ」を、最低50ずつ、できれば100ずつ書き出してみる
 ・「力関係のギャップがある組み合わせ」系統分け
   ・能力(あるスキルを設定し、そのスキルに熟達した者とそうでない者。そのスキルが重視される場面以外では、力関係が逆転することもある。強い立場の人物を強いままにせず、弱い側にも何かしら強みを持たせておく)
   ・権力(AはBに対し、何らかの力を行使できる)
   ・権威(AはBに対し、尊敬や服従の念を抱いている)
   ・捕食関係(一方が他方を捕食する組み合わせ。緊張感が出る。この緊張感を序盤で解消してしまわないように注意)
   ・弱みや負い目
   ・コンプレックス(単純な能力の優劣だけで抱くものではない)
   ・持つ者と持たざる者(他方が持っていない何かを、なるべく具体的、かつ、そのお話では決定的な意味を持つものに設定することがポイント)
 ・「価値観が対立する組み合わせ」系統分け
   ・主義/思想/宗教(抽象的になりやすいので、2人の価値観の違いが明確になるように具体的にするといい。ある宗教のどの部分が価値観にどう合致しているのかなど)
   ・好き/嫌い/賛成/反対(目に見える何かの場合、その背後に特定のイメージや意味を持っていることが多い。なぜそう思っているのか、掘り下げる)
   ・性格(論理的と感情的、など抽象的なものではやはり対立の構図が浮かばない。◯◯という性格は具体的にどういうことなのか、性格の裏にある価値観を明確にする)
   ・派閥(◯◯派というだけでは対立しないので、お互い相手の派閥に否定的である必要がある。価値観の違いが明確になるよう、具体的に掘り下げる)
   ・価値観(価値観が決まったら、あとはそこから具体的な行動を導き出すだけ。「価値観+設定」の組み合わせを何パターンか考えてみると面白くなる)
 ・バディもののプロットを作ってみる。以下の4点に留意する「作品のタイトル」「主人公と副主人公の力関係、あるいはそれぞれの価値観」「2人はどのように対立するのか」「2人はどのように対立を乗り越え、絆を結ぶのか」

----- サクセスストーリー -----------------------------------
 ・「サクセスストーリー」は、安心して読めるハッピーエンドの定番。「シンデレラストーリー」とも呼ばれる
 ・読みどころは、主人公のステップアップの過程
 ・サクセスストーリーのテンプレート
   1.ある日、主人公が夢と出会う
   2.主人公は、その夢に向かって歩きだす
   3.主人公は援助を得たり、困難を乗り越えたりしつつステップアップ
   4.当初思い描いていた夢以上の成功をおさめる
 ・叶えてみたい夢や、実現したい願望を、100個出してみる
 ・「夢や願望」系統分け
   ・◯◯になる(どうすれば◯◯になれるのか、実在のものなら取材したり、架空のものなら設定したりしておくこと)
   ・発明/発見
   ・優勝/記録/晴れ舞台(ポイントは、主人公の対戦相手や課題を少しずつグレードアップしていくこと)
   ・巨万の富(「主人公は巨万の富をゲットして何をしたいのか?」ということを明確化しておく)
   ・欠落の回復(何が足りないのか、なぜ足りないのか、どうしてそれを満たすことが難しいのか、主人公の初期状況を読者に伝える)
   ・復讐譚/リベンジ
   ・ささやかな夢/ネタ的な夢(主人公のステップアップを織り込みにくく、これ一本で書くには無理がある。追加のアイデアが必要)
 ・主人公がどうしてその夢を抱くようになったかを描いたほうが感情移入しやすい(初心者のうちは、なるべく時系列順に書く)
 ・最初のチャンスを援助者に提供させると、主人公のキャラクターやゴールまでの道のりを読者に伝えやすい
 ・ステップアップの部分では、主人公の能力をレベルアップさせていくと同時に、解決すべき課題もグレードアップさせる
 ・サクセスストーリーのプロットを作ってみる。以下の5点に留意する「作品のタイトル」「主人公の夢とは何か」「主人公が、夢に向かって歩きだすきっかけとなった出来事とは」「主人公は夢をかなえるために、どのような困難を乗り越え、どのようにステップアップしていくのか」「主人公が最終的に手に入れたものは何か」

----- プロットを演出する -----------------------------------
 ・読者に「面白い」と思ってもらうためには、最低限、満たさなければならない条件が2つある
   ・作中で何が起きているのか、読者がきちんと理解できること
   ・作中で起きた出来事に、読者が感動できること
 ・理解してもらうには「いつ、どこで、誰が、何を、どのように行ったのか」が明確に説明できていなければならない
 ・ここでいう「感動」は、規模の小さい、皆が毎日のように経験している気持ちの移り変わりのこと
 ・極端な話、ある場面の最初と最後で、そこに登場する人物の気持ちや考えがまったく変化しないのならば、そのシーンを書く意味は無い
 ・お話の中では、とにかく常にトラブルを起こす(メインの大きなトラブルを思いついたからといって安心しない、ちょこちょこと小さなトラブルを入れる)
 ・作中でトラブルを起こすときは、並行して、それに対する登場人物のリアクションを考えていく
 ・葛藤(2つの相容れない欲求を拮抗させる。話を盛って欲求を大きくすることで葛藤もより大きくなる)
 ・「話を盛る」=「登場人物の感情の振れ幅を大きくする」
 ・感情移入してもらうためには、主人公や視点人物には普遍的な感情を持たせる(ある物事について、大抵はこう感じる、普通はそう思うという気持ち)
 ・主要な登場人物の内面の真実を読者にきちんと見せる
 ・読み手に「なぜだろう?」と思わせるような魅力的な謎を次々と提示することは、作品に対する読者の興味を維持するための重要なテクニック
 ・「謎」の作り方。結果を先に見せる(読者は理由や原因が気になる)
 ・サスペンスの手法。「予告と中断」を使う(この後いったいどうなるのか。読者は続きが気になる)
 ・昔話の「桃太郎」のワンシーンを、トラブル、葛藤、謎、サスペンスのいずれかひとつ(複数でも可)のテクニックを使って演出してみよう

----- おわりに ---------------------------------------------
 ・ありがちな展開だとわかりつつも、なぜか楽しんで読んでしまう、観てしまう作品が、世の中にはたくさんある。そんな愛すべき「定番」のテンプレートを紹介することで、創作のきっかけを作ることができれば幸い

 ※本文章は『「物語」の組み立て方入門 5つのテンプレート/円山夢久(著)』を引用または要約して記述したものです
 ※「大人の文章塾 夢久庵」(著者ホームページ)
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