エブリスタ小説スクール(石田衣良)
----- 第0回(前編) -----------------------------・作家はそれぞれ自分のやり方(道)を持っている、しかし最後に辿り着く場所(山頂)はなんとなく似ている
・ペンネームはよく考えて欲しい。本を見るときに目に入るのは「タイトルと著者名」だけ。目立つだけだと飽きられやすいし、変な名前は信用度にも関わる
・新人賞の最後に残るようなものでも、タイトルがよくない。1年かけて書いたのなら1~2ヶ月はタイトルだけ考えよう
・タイトルの考え方
・パロディ(本歌取)
・シンプル(単語一つなど、著者が有名だと効果が高い)
・主人公の名前
・謎めいていてカッコイイ(たとえば松本清張作品)
・文章になっているようなライトノベルのタイトルは、ありだと思うが長い目で見ると短く引き締まったタイトルのほうが良い
・色々なタイトルの付け方をテクニックとして持っていると良い
・「面白いな」と思える何かがあれば作品を書くには十分。ただし、何も考えずに書き始めると「純文学」になり、成功する見込みが小さい。テーマとキャラクターとおおまかなプロットぐらいは用意してから書き始めたほうがいい
・執筆前の儀式的なものは作らないほうが良い、フラットなまま執筆をする
・作品のキャラクターやストーリーができているのに書けない場合は、作品の世界のことをまだ感じ取れていない。苦しいけれども耐えて感じ取れるところまでいかないといけない
・キャラクターは最初に濃い目に出して普通に戻していくぐらいが良い。とくにライトノベルは「出オチを狙う」
・小説誌の応募作は1000作ぐらい、一次選考で200作、二次選考で30~40作、最終選考で4~5作、そして1作がデビュー
・デビューした作家で生き残るのは5分の1(編集者のダメ出しと、自分の自分に対するプレッシャーで潰れる)
・完璧を目指すと潰れてしまうのでもっと緩くて良いのかもしれない
・新卒で一流企業に就職した場合の、獲得想定賃金は、3~4億円。ずっとアルバイトしながら小説を書いた場合は(小説の収入を除いて)1億円。自分で納得がいく道を選ぶ
・(金沢伸明さん)読者からの意見は「気にしない(キツイ場合は見ない)」
・(金沢伸明さん)ファンとアンチがいるから盛り上がる。アンチはむしろよく読んでいる
・基本的に編集者を頼って良い。編集者の言うことは聞き過ぎない、良い距離感の関係を続けていければ良い
※第0回 前編(1/4)
※第0回 前編(2/4)
※第0回 前編(3/4)
※第0回 前編(4/4)
----- 第0回(後編) -----------------------------
・デビュー作品は力を入れる(運が絡んでベストセラーになることがある)
・巨匠が去ったあとは「席」がある(同じような作品を読みたい読者がいる)
・小説をたくさん読むと突飛なアイデアは出づらくなるが、長持ちする。幅広く読んだほうが良いが読んだ作品に囚われないようにする。読まないでヒットを出せるのは10年に1人の逸材だけ
・淡々と自分のペースを守って書くのが一番良い
・エブリスタの作品は7~8割がスマートフォンからの更新
・作品数が増えれば、それぞれの販売部数が小さくても生活できる
・副業の執筆で3年も続けられれば案外プロになれる
・圧倒的に上手い圧倒的に売れる作家でなければ、性格がよくてコミュニケーションができて編集者と楽しく話せる人が結局残る
・作家同士の横のつながりを作っておく(本を売るのが大変な時代なので人を集めて動かす準備、そうでなくてもウマが合う人は大事)
・男性小説家はある程度名前が売れると「どんな男でも」モテる、女性小説家はとくに変化しない
・顔出しするかによらず、メディアで使うための写真はあったほうが良い
・マンガは圧倒的にキャラクター優先
・小説はどちらかというとストーリー先行
・キャラクターの内面について考える(人に言えない怖いものはなにか、人に言えない好きなものはなにか)
・キャラクターは外見的な特徴を一つ立てて出オチさせて、後からいくつかのエピソードで掘り下げていく
・「普通の」キャラクターでキラッと光るみんなの心に残るキャラクターができると良い、でも難しい
・小説の参考にするだけではなく、全く関係ないものを読んでみると良い、読書の幅と会う人の幅は広いほうが良い
・現実において、何が良いことか悪いことなのかはわからない。色々なものの見方が身につけば、文学のすごいところに手が届くかもしれない
・話し相手から良い話を聞き出す方法は、自分から一番良いネタを振ること(人間は負けず嫌いなので、良いネタを返してくれる)
・デビュー後に経験値が飛躍的に上がるので、今の状態を心配することはない
・自分の一番良いネタを出して出して出しきって書く、姑息な手は通用しない
・物語の要所要所に山場があると良いが、山場作りは作家のクセがあるので変えるのは難しい
・キャラクターは記号的なもので作り上げても良いが、記号ではない魅力的なキャラクターが作れれば「そのキャラクターで一生食える」
・男キャラも女キャラも作るのが得意という人はいない
・自分が得意な性別の「本当に◯◯なキャラクター」を作れると良い
・実体験を盛り込める場合は盛り込んだほうが臨場感が出る
・小説家は何十年も書いていく職業、色々なものを書くことになる
・ジャンルの中で小さくなって読者を奪い合っている現状がある、ジャンルを超えて欲しい、しかしジャンルも疎かにしてはいけない
・小説家は「あなたの見ている夢を私も見たい」と人が寄ってくる珍しい仕事
・小説家は「ツライけれども、結構イイ仕事」
※第0回 後編(1/4)
※第0回 後編(2/4)
※第0回 後編(3/4)
※第0回 後編(4/4)
----- 第1回 -------------------------------------
・書き出しはその本を売る、結末は次の本を売る
・書き出しは不安になる、不安になると「弁解(説明)」から始めてしまう
・物語が動くところから書き出す(読者はストーリーとキャラクターにだけ興味がある)
・テクニックの一つとして、順番の入れ替えがある(事件を最初に書いて、過去のことを後ろにもってくる)
・小説を書いていると「これは面白いのか?」という不安が出るが、その不安はプロになっても消えない
・書いていることについて「知識が足らないのではないか?」という不安があるが、小説は究極のところ作り話なのである程度のところで割り切る
・書きたいジャンルの本を1000冊(和書500、洋書500)読む、すると上手くなるし編集者の目を誤魔化せる
・書く技術はなかなか上がらないが、読み続けると「見る目」がどんどん育つ
・速くても100ページ1時間ぐらいはかけて読んで欲しい
・「動き」を中心にお話をつないでいく
・世界観の説明などはキャラクターのアクションに混ぜていく
・西洋の小説はロジックがしっかりしているので読むべき
・1000冊読んだら、本当に感動するものは20冊ぐらいしかない。しかし、その20冊が自分の創作の「核」になる
・今の日本の作家は、日本にばかり集中してどんどん小さくなっている、海外にも目を向けてほしい
・良い小説家になるには、楽しくよりよく生きる、良いアートに触れる、面白い人に会う、感動する。年をとるとなかなか感動しなくなるから若いうちにやる
・ストーリーの原型は6~7パターンぐらいしかない
・異質なものを組み合わせるのが面白さの源
・とにかく最後まで書いて誰かに読んでもらう、途中で止めると「展開させる力」「終わらせる力」が育たない
・要約する力は本を読む人間には欠かせない、長編小説でも映画でも200字ぐらいにまとめられる
・映画やドラマを分析してみる(どんな構成になっているか分解して考える)
・人生は巨大な退屈の山を抱えている、小説はこの山を削ることができる
・キャラクターにどれだけ「自分」を入れるか、という問題があり、極めてバランスをとるのが難しく様々なやり方がある
・キャラクターというのは小説の中で「生き生きしている人」
・マンガのキャラクター作りを勉強すると良いかもしれない
・王道キャラクターを自分なりにいじってみると良いかもしれない
・読者は作者がのびのびと自分を発揮しているのが見たい
・「面白さ(世界観)」と「テーマ」を上手く結びつくと良い
・テーマをシンプルで普遍的なものにして世界観を極端にすると良い
・一番の理想は、世界を書いているうちに作者自身がテーマを発見する
※第1回(1/3)
※第1回(2/3)
※第1回(3/3)
----- 第2回 -------------------------------------
・エブリスタのスマホ小説対象2014は、150枚以上という規定にも関わらず10000作品ほど応募があった、これは驚くべきこと
・新人賞にはあらすじを書けという規定がある。一番多い失敗が「映画の予告」みたいにしてしまうこと。きちんとオチまで書く(お話が面白ければオチまで書いても面白い)
・同じ原稿を同じ時期に複数の賞に応募してはいけない、結果が出たあと手直しして別の賞に応募するのは大丈夫
・作者自身のキャラクターも重要。どういうキャラクターの作家で行くのか、考えておいたほうが良いかもしれない(メディア露出)
・何がウケるのか読んでもらえるのかはわからない、でもそこに向かい合い続ける人生は一本筋が通っていて良い
・読者は「意外と忍耐強い」ので最後まで読んでくれる、最後まで読めば面白いという自信があれば中だるみを感じても大丈夫
・短編は、長編ぐらいのボリュームを短編サイズに圧縮して、広がりのあるラストを作れると良い
・短編は最初から最後まで「同じトーン」で書く
・ネットと出版社は別のものとして進んでいる印象がある、ネットで書きながらだんだん出版社に移っていけると意外と良い
・お金を稼げるようになると、色々な人が協力してくれるようになる
・諦めないでとにかくぶつかり続ける、それを何年か続ける
・マンネリを気にせず同じパターンに飽きるまで気に入ったパターンをやる
・「ウケるもの」というのは存在しないし、狙ってつくったものはつまらない
・取材はやれる限りやって、忘れて一歩逸脱して作る(読者は勉強の成果を見たいわけではない)
・実際に書いているうちにプロットからズレる場合はズレたまま進めたほうが良い(作家は頭よりハートのほうが賢い)
・作家は新人もベテランも関係ない世界
・自分の当たり前の世界を当たり前のように書く(個人の感覚は必ず他人とズレがある)
※第2回(1/3)
※第2回(2/3)
※第2回(3/3)
----- 第3回 -------------------------------------
・本の世界はアマチュアの世界になっている、読者が上手さよりわかりやすさや親しみやすさを求めているのではないか
・「下手さ(フレッシュさ)」は一つの魅力、これを残しながらプロの「上手さ」を身につけていけると良い
・フレッシュな作品は、良いキャラクターと突飛なストーリーがあることが良い。しかし「描写」がない(台本みたいなものになっている)
・教室を書く場合、教室にあるものをとにかく五感全てで書き出してみる、その中で自分が特徴的に感じるものを使う
・アマチュアの作品は、ギャグならギャグといった「トーン」が一定しない、トーンは描写でコントロールするのがやりやすい
・普段からモノを見るときに、いつでも切り出して作品に使えるように見る
・書きながら上手くなっていく感じが読者も嬉しい、この上手くなっていく過程がブレイクのチャンス
・全体を一定のトーンで揃えながらも、1個異質なものを入れる、このセンスがオシャレや描写では大事(どう外すか)
・日常生活で感じたものは全て小説に活かせる
・半分冷静に、半分感情的に書く(たとえ机だろうとロマンチックな気持ちで書けばロマンチックになる)
・色々な感情を実体験から引き出せると小説の幅が広がる
・書く小説のジャンルは「すごい好き」か「すごい苦手」のどちらかが良い
・ホラーは「なんとなく怖い雰囲気」が最後まで続くことが大事
・突飛な名前は時代の変化で古くなってしまうので気をつけて使う
・主人公の名前はちょっとセンスがあってくどくないぐらいがちょうど良い
・小説は推敲してもそんなに良くならないので少しだけやれば良い、直しよりも新しいものを書いたほうが腕が上がる
・プロットを練る方法といきなり始める方法、両方できると強いがそういう人はなかなかいない
・プロになると三人称のほうが書きやすいことがわかるが、最初は一人称のほうが書きやすいと思う、そこに壁はないので一方で書ければもう一方でも書ける
・プロもアマも関係ない、同じ山を別々の道で登っているだけ、優劣はない
・今、自分が持っている武器で精一杯戦い抜く、という決意があれば大丈夫
※第3回(1/3)
※第3回(2/3)
※第3回(3/3)
----- 第4回 -------------------------------------
・五感に訴えかける描写で読者に想像してもらう
・会話の教科書に「てのひらの迷路」
・つまらなくても読者は意外と読んでくれる、それを信じて書き続ける
・プロの小説家は、起きている間は小説のことを考えるか書く生活
・会話があれば全てのことを入れられる(情報、ストーリー、キャラクター)
・日常会話には無駄がたくさんあるが、小説の中の会話は無駄な部分を全部切らなければならない
・文章の書き方は人それぞれで正解はないので、書いて上手くなるしかない
・物語を進めるのに必要な文章以外はとにかく「切る」と上手く見える
・切ることで「リズム」が出てくる、人間は読みやすくてリズムの良い文章は「どんな文章でも面白く見える」
・五感を総動員して、その場面でそのキャラクターが何を感じているか描写する(自分が主演するつもりで)
・自分がカメラになって作品世界に入っていく
・人と一緒に笑ったり泣いたり出来る普通の人が、意外と小説家に向いている
・あることが起きたときに、自分の心の動きを細かく観察してほしい
・現実にあるものを書きたい場合は、1回ぐらい取材すると良いかもしれない
・小説の中で「方言」を上手く使えると、魅力が2~3割アップする
・書いているときに他の作品のアイデアが出てくるのは「逃避」、アイデアはメモっておいて今の作品に集中する
・変わらない普遍的なものに時代を象徴するものをちょこっと乗せる
・逆の部分をちゃんと描けるようになると良い(古いものを描くときは新しく、新しいものを描くときは古く。女を描くときは強く、男を描くときは弱く)
・売れる小説家のイスは10個ぐらい、空いたら「自分でイスを持っていって」座らないといけない
※第4回(前編)
※第4回(後編)
----- 第5回 -------------------------------------
・エブリスタにある小説と書店にある小説、何が違うかというと、リアリティ
・リアリティ(現実っぽい、実感がある、心理がもっともらしい、共感できる、説得力、起こりえる、描写、など)
・同じ言葉を色々な言葉で言い換えられると表現の幅が広がる
・どんな小説でも、設定がいい加減でも、ぶっ飛んでいても大丈夫。それをリアルだと感じさせる何か
・リアリティはたくさんの要素で支えられている。自分が得意な要素を延ばす
・ほとんどの小説は、本当には起こらないことが書いてある
・起こりえること、起こりそうなこと=ナチュラリティ
・「リアルだ」という感覚は、作り物であることが前提になっている(始めから嘘でかまわない)
・ライトノベルと呼ばれるものの多くは、「心理」のリアリティが弱い(現実の世界で、本当にそうなるかどうか、一歩踏み留まって考える)
・ぶっ飛んだ設定でも、共感を得られるように意識する
・全ての感覚を使って書き込み、実感を作り上げていく
・みんなの作品は「背景描写」が薄い
・「池袋ウエストゲートパーク」を書くときには、池袋で細かな取材を行った
・二行か三行で忘れられない描写をスパッと描く
・作家には「努力型」と「生まれつきパワーがある型」がいる
・文学賞で「すごい作品」と「うまい作品」があったら、ほとんど「すごい作品」が勝つ(可能性があってすごいパワーを感じるもの)
・「ナイルパーチの女子会/柚木麻子(著)」(すごい)
・「絶唱/湊かなえ(著)」(うまい)
・自分と「同じタイプ」の人の本は読んでおいて、その人が書かないようなところで勝負すると良い(自分が意識しなくても、比べられることになるため)
・オマージュやリスペクトはダメ、尊敬しているなら似ないようにする
・自分のレンズを通して世界を見た結果が、小説や音楽や映画になる
・世界を見るときに必ずこうなってしまうという、レンズの歪み自体が大事
・自分のレンズは自分だけしか持っていない絶対にオリジナルのもの、レンズの歪みについては気にしなくて良い
・こう書かないと立派ではない、小説として成り立たない、賞がもらえない、などと一切考えなくて良い。自分の歪みを上手く残す
・自分を通して世界を表現することで小説ができあがり、自分と似たようなレンズを持っている人が喜んでくれる
・あれこれ考えるより、自分の持っている歪みやレンズを綺麗に磨いて、淡々と努力をして自分の力を上げる。新しい本、新しい才能はいつも求められている、みんなそれを待っている
・短編を何作も書いて、小説の始まりと終わりの感覚を掴む
・長編を何ヶ月もかけて書きながら、月1本ぐらい短編を書いて欲しい
・アイデアが浮かんだからといって、冒頭ばかり書いていても上手くならない。最後まできちんと書いて、できれば誰かに読んでもらう
・自分が作り上げた「これは面白い」という架空の世界を、自分が持っているもの全てを賭けてリアルに作り上げる
・自分の強いところに磨きをかけて、自分の弱いところは補っていく、そういう地道な努力を重ねてリアリティを出す
・小説を書くことの始まりについて。自分の場合は、何か一つ「これは面白い」と思えるものがある場合に、書く
・「この素材があれば書ける」というものをルーティーンとして作ってしまうと良いかもしれない(趣味なら時間はいくらでもかけられるが、プロになると毎回締め切りがある)
・書くためのルーティーンなしにプロになるのは、練習や準備もなしに中距離走を果てしなく駆け続けるようなもの
・「面白い」と思うものに出会ったら、面白さの核をメモしておく(ネタ帳)
・小説家は書く人であると同時に、色々なものを見て「面白がれる人」
・作家を長く続けると、書くのが簡単になる一方で、面白いと思えるものを見つけるのが難しくなる
・書いていれば上手くなる。面白いと感じる心をずっと残しておいて欲しい
・デビューに関して焦る必要はない、地道に力を付けて、書きたいネタをたくさん用意して、変な人に対応できる心の強さをもっていれば、なんとかなる
・執筆スピードは書いていれば上がる(1時間3~6枚のペースは欲しい)
・スピードを上げて書いたもののほうが読みやすいこともあるので、試してみて仕上がりの差を確認する
・一つの作品に取り組むときに、「今回はこういうテーマでいこう」と決めることがあるが、執筆の仕方についても毎回課題をもって取り組む
・創作は、自分が生きているこの世界の「足りないところ」や「我慢ならないところ」を、自分の頭の中だけで作り上げられる。これを楽しいと感じるのは自分だけだ、と思っているかもしれないが、実は他の人も一緒にその世界を覗き込んで楽しんでくれる
・小説家は、もっともっと作品の世界に入り込んで良い、やり過ぎの場合は周りがストップをかけてくれる
・「重複表現」は普通に使うとダメ、伏線などでわざと使う場合はアリ
・どんな作品を書いても暗くなってしまう場合。それも持ち味なので大事にして書く、もしくは「躁」のような状態を作ってはずして書いてみる
・歌手や俳優は引き際というものを考えないといけない、しかし小説家にそういうものはない。小説家は、自分で新しい世界を作るのに誰かのお金を必要とせず、自分で始めて終わらせることができる
・小説家は、あらゆる仕事の中で一番自由でお金がかからない
・俳優が演技にOKを出されたとき、何がOKだったのかはわからない。小説家は、誰かがどんなにダメだと言っても、自分でOKを出したらOK(編集者から言われたことをある程度受け入れつつも、ここは譲れないというところを持っているべき)
※第5回(前編)
※第5回(後編)
----- 第6回 -------------------------------------
・ライトノベル方面に進むなら、自己言及的でアニメ脚本的な書き方で良い
・大人向けに進むのであれば、客観的に三人称の文章がしっかりと書けて、会話だけが膨らむことがないバランスにしなければならない
・技術的な問題なので、自分の方向性や作品のタッチによって書き方を変えていけると良い
・ライトノベルと大人向け、差があるとは思わないで書き分けてみると良い
・読者は最初、初対面の時のように「この作者は信じられるのか?」という疑問をもっている。最初からブッ飛んでいたり普通過ぎるとよくない
・書き始めは作品のムードが伝わる描写から始める
・トーンを揃えた描写をする。文法として合っているかではなく、言葉のトーンの流れの中でズレているものを避ける
・いきなり難しい言葉を並べてしまうのは、合コンの挨拶で難しいことを言うモテない男子。普通の中でセンスが良いというのが大事
・同じトーンで話し続けられると苦しくなる。真剣過ぎずコミカル過ぎず、バランスを見ながら話を転がしていく
・新人賞の応募作では「最後まで読んでくれるのか」と心配する必要はない、仕事として最後まで読んでくれる
・文章を書く不安は誰にでもあるもの、そこは耐えて書いていくことが大事
・読者は作者を信じるようになると、次はセンスを見るようになる。センスをじわじわ押さえながら、面白い物語を始める
・ライトノベルの3分の2は会話、会話が面白ければ読めてしまう
・皆の作品は「おしゃべり」が上手くて、「おはなし」が上手くない
・「おはなし」の部分があっさり終わってしまう傾向がある、地味な地の文をレベルアップしてほしい
・「出会った付き合った」だけで小説が一本書ける。皆の場合は文字通り「出会った付き合った」と書いて話が終わってしまう
・2本、3本と書いていけば、小説の中でのバランスを書きながらとることができるようになってくる
・書いた後に削る作業をする。本筋から無駄だなと思うものは削る
・「おしゃべり」は肉、「おはなし」は骨
・面白い小説をもっと読む、自分の中の面白さの基準を引き上げる
・読者の評価を気にするあまり、読者の求める方向にいきすぎてしまうと、作家としてよくない。当たるものだけを狙うと進歩が止まってしまう
・ネットは特に、作者と読者が近いので、適度な距離を作れないとやっていくのが大変かもしれない
・作中の時間軸を間違うことはプロでもある、リアルな小説の場合は念のためタイムスケジュールを作っておくと良い
・技術が全部できていて、面白くない小説は多い。技術は枝葉の部分
・すごく面白いアイデア、すごく面白いキャラクターみたいなものがあれば、技術的な欠点はほぼ全て乗り越えられる
・心の平安のために、ネットのリアクションは気にしない
・アイデアは少しずつ出るので、題材や作品トーン毎に「小説の貯金箱」をいくつかもっておいて貯金する
・小説家は目の前のものが全て素材になるので、いつもいつも気をつけておく
・モチベーションの維持はすごく難しい。たとえば、モチベーションの高い人を見ると上がることがある
・情景描写どれぐらい書けばいいか。ざっとしたところがわかるぐらいの描写をした上で、すごく印象に残るところを鋭く書く
・描写力を上げるには形容詞や動詞を上手く使う必要がある、現代俳句の選集を読むと良い
・描写の過程で(できれば短い言葉の中で)跳躍が欲しい
・現代俳句の選集を一冊読んで、自分の好きな句は覚える
・言葉のリズムが良いとイメージが広がる、もたもた書いていると読者はその場面を想像してくれない
・細部を描くことで、読者に全体がわかったと勘違いさせる
・「上手いね」と思わせる描写が、作中に5個もあれば、直木賞ぐらい取れる
・俳句の名人でも良い句は一生に10個程度しか作れない、小説家も良い描写を一生にいくつか作っていけば良いのではないか
※第6回(前編)
※第6回(後編)
※本文章は「エブリスタ小説スクール/石田衣良(講師)」を引用または解釈して記述したものです。引用元の動画は各節の下部に記載してあります